他人からみれば、私は充分に恵まれた家庭で育ったのだろう。
衣食住に困ることはなかったし、教育にもお金をかけてもらっていた。
でも、私には自由がなかった。
自分の意思で決められるものが極端に少なかった。全ての行動は把握され、母が気にいるか気に入らないかで許可が決まった。
その基準も決定権も全て母にあり、私のために考えられたものではなく、全て母の価値観に合うか合わないかだった。
母が気に入らない物だと洋服ひとつ、おやつひとつ買ってもらえなかったし、習い事も母が決めたもの、母のお気に入りの先生。
それでいて母の興味がないことは、徹底的に無関心で、例えば友人関係。中学生にもなれば、だんだんと友達同士で遊びに行く機会もあるし、友達との付き合いもある。でも、相変わらず母が気に入らない場所は行ってはいけないし、時間も限られた時間だけ。
いつも友達に「ごめん、私はいけない。「私、先に帰らなきゃ」時間を気にして全然楽しめない。私の気持ちや私の人間関係なんて、どうでもよかったのだろう。
強烈な過干渉と強烈な無関心で、母に逆らうなんて絶対にできず、いつも顔色をうかがっていた。
親に甘えられる人が羨ましかった。